最近、「AIエージェント」という言葉を耳にする機会が増えました。
特に Anthropic が提供する Claude Cowork の登場以降、
- AIが業務を代行する
- ERPはいらなくなるのでは
- SaaSはAIに置き換えられるのでは
といった声を聞くこともあります。
私たちは日頃、ERP(NetSuite)の導入・運用支援に携わる立場として、
こうした話題に対して、期待と同時に慎重な視点も持っています。
本記事では、
「AIエージェントとは何か」
「Claude Coworkは何ができるのか」
「ERPとはどう棲み分けられるのか」
を、現場目線で整理してみたいと思います。
AIエージェントとは何か
AIエージェントとは、簡単に言えば
人の指示を受けて、複数の作業をまとめて代行するAIです。
従来の「質問に答えるAI」と違い、
- 調べる
- まとめる
- ファイルを整理する
- 下書きを作る
といった作業を、ある程度自律的に実行します。
ただし、重要なのはここです。
AIエージェントは、業務判断や責任、統制を担う存在としては設計されていません。
あくまで、人がやっていた作業を軽くするための仕組みです。
Claude Coworkとは何か
Claude Coworkは、Anthropic社のAIアシスタント「Claude」に追加された、作業代行型のエージェント機能です。
できることを整理すると、
- ローカルファイルの読み書き・整理
- 複数資料の要約や再構成
- Web検索と情報収集
- スクリーンショットやレシート画像の内容理解
- 定型作業や雑務の自動化
といった領域になります。
一方で、以下のようなことはできません。
- 会計処理を確定する
- 業務ルールを決定する
- 権限や責任を管理する
Claude Coworkは、ERPやSaaSを置き換えることを目的とした仕組みではなく、
業務システムの外側で、人の作業を軽くするための機能として設計されています。
なぜAIエージェントが業務の中心になりにくいのか
AIエージェントが話題になる一方で、
実際に業務システムの中心に据えられるケースは限定的です。
理由は大きく分けて三つあります。
4-1. セキュリティと責任の問題
ERPでは、
- 誰が
- どの権限で
- どの操作を行ったか
が明確に記録され、監査や説明責任に耐える形で設計されています。
一方、AIエージェントは「人の代理」として動くため、
操作の責任主体や判断根拠を形式的に固定することが難しいという特性があります。
4-2. トランザクション整合性の問題
会計・在庫・請求といった業務は、
一連の処理が整合した状態で完結することが求められます。
AIエージェントは複数の操作を横断的に行えますが、
途中で失敗した場合のロールバックや整合性保証は、ERPほど強固ではありません。
4-3. 監査・説明可能性の問題
業務システムでは、「なぜその処理が行われたのか」を後から説明できることが重要です。
AIの文脈判断は便利である一方、説明責任の観点では扱いにくい側面があります。
これらの理由から、AIエージェントは業務システムの「中心」ではなく、
外縁の補助レイヤーに留まるのが現実的です。
NetSuiteとの棲み分け
NetSuiteは一貫して、
- 正式な業務データの保管
- 業務ルールの固定
- 権限・承認・監査の担保
を目的とした統合業務システム(ERP)です。
この役割は、AIエージェントとは設計思想が異なります。
整理すると、両者の関係は次のようになります。
- AIエージェント
- 人の操作や雑務を代行する
- 補助的・一時的な処理を担う
- NetSuite
- 業務の正本を保持する
- 確定処理と責任の所在を担う
構造としては
人
└ AIエージェント(作業補助・代行)
└ NetSuite(業務の正本・統制)
AIがERPを置き換える、という構図ではありません。
むしろ、AIが前に出るほど、ERP側の「正しさ」や「統制」の重要性が増します。
AIエージェント時代に起きる現実的な変化
今後、現場では次のような変化が起きていくと考えられます。
- 人がERP画面を直接操作する頻度は減る
- 操作説明や画面教育の重要性は下がる
- 業務ルールや確定ポイントの整理がより重要になる
これは、ERPの価値が下がるという話ではありません。
むしろ、「何を正として管理するか」がより明確になります。
という変化です。
おわりに
AIエージェントの登場は、ERPや業務システムを否定するものではありません。
AIエージェントは
- 業務判断や統制を担う存在ではない
- NetSuiteは今後も業務の中核として機能し続ける
- 両者は競合関係ではなく、役割の異なる存在である
便利なものは取り入れつつ、
どこまでをAIに任せ、どこを人とシステムが担うのか
を冷静に整理することが、これからますます重要になります。
私たちは今後も、AIの話題に振り回されるのではなく、
業務・統制・システムの現場から、実装可能な整理を続けていきたいと考えています
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